戦争映画「シンドラーのリスト」は、第二次世界大戦中にヨーロッパで起きたホロコーストを題材にした戦争映画です。多くのユダヤ人を救った実業家のオスカー・シンドラーを主人公に、モノトーンのドキュメンタリー調でユダヤ人迫害を描いています。1993年に公開され、アカデミー賞12部門にノミネート、7部門で受賞しました。
今回は映画の舞台となったポーランドのクラクフを紹介したいと思います。クラクフは世界で最初に世界遺産に登録された魅力的な古都。訪れた人々を魅了する観光スポットです。そして戦争の記録をその目で見て体験できる世界遺産アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館(ホロコースト記念館)もこの街にあります。
あらすじ
ナチス党員であるオスカー・シンドラーは金儲けにしか興味のない実業家。ナチスに占領されたポーランドの都市クラクフで、工場を買い取ってホーロー容器の生産をはじめる。工場で作業するのはクラクフ・ゲットーに囚われた格安で雇えるユダヤ人たち。商売は順調、シンドラーはナチス将校たちに取り入ってさらに事業を拡大させていった。
やがて悪名高いSS将校のアーモン・ゲートがクラクフにやってくる。ゲットーや強制収容所でユダヤ人の殺戮が始まり、シンドラーの工場で働くユダヤ人たちにも危機が迫る。最初は金儲けしか関心がなかったシンドラーだが、ユダヤ人たちのために、あるリストの作成を決意する…。
第66回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、美術賞、作曲賞受賞。
主な出演者
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:
オスカー・シンドラー:リーアム・ニーソン
イザック・シュターン:ベン・キングズレー
アーモン・ゲート:レイフ・ファインズ
エミリエ・シンドラー:キャロライン・グッドール
ポルデク・ペファーベルグ:ジョナサン・セガール
ヘレン・ヒルシュ:エンベス・デイヴィッツ
マルセル・ゴルトベルク:マーク・イヴァニール
ユリアン・シェルナー:アンジェイ・セヴェリン
ミラ・ペファーベルグ:アディ・ニトゥザン
カジャ・ドレスナー:ミリー・ファビアン
ダンカ・ドレスナー:アンナ・ミュシャ
メナーシャ・レヴァルトー:エズラ・ダガン
監督を務めたスティーヴン・スピルバーグ自身もユダヤ系アメリカ人のため、この作品には深い思い入れがあるそう。なんと10年もの歳月をかけて企画をしたそうです。また、撮影中の残酷なシーンはとても他人事に思えず、気分が落ち込んでしかたがなかったそうです。「血に染まった金は受け取れない」として、監督料の受け取りもずっと拒否しているそうです。
シンドラーを演じたリーアム・ニーソンは賢人や人格者を多く演じてきた俳優です。反対に、悪役アーモン・ゲートを演じたレイフ・ファインズは「嵐が丘」のヒースクリフ、この作品のアーモン・ゲート、「ハリーポッターシリーズ」のヴォルデモートなど、映画史に残る悪役を演じています。
映画の舞台・ロケ地
映画の舞台はポーランドの都市クラクフで、シンドラーのホーロー工場、クラクフ・ゲットーなどがありました。
シンドラーのホーロー工場
劇中でも登場するオスカー・シンドラーが経営したホーロー工場です。
現在は改修され、14施設からなる「クラクフ歴史博物館」の1つとして、ナチス占領下のクラクフ市民の暮らしをリアルに伝えています。
電話:12-257-1017
月曜日 10:00 - 14:00、火曜~日曜日 10:00 - 18:00
入館料:大人17zł 子供・学生14zł
クラクフ・ゲットー跡
クラクフのゲットー跡として残されたこの広場は、強制収容所に移送されるユダヤ人たちの集合場所だったそうです。ゲットー跡と言っても、当時の様子を伺えるものは多くありません。椅子のオブジェがいくつもあるのは、追い立てられた人々が残した家具や持ち物を象徴しています。
周りの観光スポットやツアー
クラクフはポーランドでも最も歴史のある都市の一つです。それだけに観光名所もいろいろです。
聖マリア教会 (クラクフ)
聖マリア教会はクラクフ市街の中心地にあります。
13世紀に建てられたゴシック様式のこの教会は、足を一歩踏み入れると、その壮麗さに目を奪われることでしょう。聖母マリアの被昇天を描いたレリーフを中心に、聖母マリアにまつわる様々な場面が描かれています。
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電話番号:+48-12-422-05-21
アクセス:クラクフ中央駅より徒歩13分
ヴィエリチカ岩塩坑(クラクフ)
ヴィエリチカ岩塩坑は、クラクフの地下300メートルに広がる岩塩の採掘場跡です。世界で最初に世界遺産認定された12のスポットのひとつです。幻想的なたたずまいは世界中からの観光客をひきつけています。
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地下300メートルには坑夫達が無事を祈った教会、現在も利用されているセラピー施設、レストランなどがあります。
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所
「アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所」は、第二次世界大戦中にユダヤ人の絶滅を目的として作られた強制収容所で、1979年に「負の遺産」として世界遺産に登録されました。
クラクフの郊外の街、オシフィエンチムにその施設は保存されています。ユダヤ人迫害の歴史を忘れないよう、跡地は博物館として展示されていますが、あまりに過酷な歴史であるため、見学内容がかなりショッキングであることも事実です。
こちらはユダヤ人を運搬した貨物列車です。
こちらは、「働けば自由になれる」と書かれた門。じっさいにはここから自由になれた人は、ごく限られていました…。
ポーランドはたくさんのユダヤ人が暮らしていた国でした。歴史的に西ヨーロッパで迫害されたユダヤ人への保護と受け入れをしてきたためです。このためホロコーストによる被害もたいへん大きかったのです。
ホロコーストが激しくなると、アウシュヴィッツ強制収容所が手狭となったため、ビルケナウ強制収容所が作られました。現在、両収容所は無料のシャトルバスで往復することができます。
住所:Wiezniow Oswiecimia 20, 32-603 Oswiecim
電話番号:+48-33-8448100
アクセス:Oswiecim駅から徒歩20分
住所:Wiezniow Oswiecimia 20, 32-600 Oswiecim
電話番号:+48-33-8448096
アクセス:アウシュビッツから無料のシャトルバスで約5分
日本美術技術博物館“マンガ”館
日本美術技術博物館"マンガ"館は、フェリクス・"マンガ"・ヤシェンスキ氏が収集した6500点にも及ぶ日本文化が展示されています。日本好きが高じて自らの名前にもマンガと入れてしまったのだそう…!
安藤広重や北斎、歌麿、写楽などの浮世絵が収蔵され、ポーランドの人々に日本文化を伝えています。
電話番号:+48-12-267-2703
アクセス:クラクフ中央駅より徒歩約20分
現地の食べ物・おみやげ
ここではクラクフのグルメを紹介します!せっかくクラクフまで来たなら、寄ってみたいお店を紹介します!
Gospoda Koko
ゴスポダ・ココは、クラクフ旧市街のやや南側にあって、クラクフでは一番有名なポーランド料理店だと思います。ポーランド語で「ココの宿屋」という可愛い名前です。
値段がリーズナブルなので節約旅行したい人にはうってつけです。「メイン料理+シチュー+サラダ」のセットで600円、ビールは0.5Lで約150円です。アラカルトで一皿から注文できます(ポーランド料理は1人前の量が多めです!コースを注文するときはご注意を)。
座席は地上と地下にあり、地下ではインターネットがつながりづらいという情報もあります。営業時間は午前8時~午前1時までなので、朝昼晩と食事はすべてカバーできます。クラクフ滞在時には一度は行きたいレストランです。
カジミエシュ地区にあるザピエカンカ屋さん(複数)
ポーランドには細長いパンの上に肉やチーズ、野菜を載せて食べる「ザピエカンカ」というファーストフードがあります。ポーランドではあちこちにあり、手軽に食べられるスナックですが、とくにクラクフのユダヤ人地区「カジミエンシュ」にはザピエカンカ屋がたくさんあります。
マーケット広場に有名なザピエカンカ屋が集まっているので、小腹がすいたら足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
交通機関
クラククのクラクフ・バリツェ空港まで日本から直行便はありませんので、途中経由する必要があります。ここでは一例を紹介します。
成田空港(NRT)~(11時間25分)~ワルシャワ・フレデリック・ショパン空港(WAW)~(55分)~クラクフ・バリツェ空港(KRK)
まとめ
ポーランドのクラクフは、歴史あふれる美しい街。世界的な観光スポットがたくさんあります。ホロコースト記念館など、人類が忘れてはいけない負の歴史だけではなく、中世から築きあげられた素晴らしい街並みとグルメも堪能してください!
ホロコーストを指揮したアーモン・ゲートには娘がおり、彼女は戦後長いこと悩んで生き残ったユダヤ人たちに会いに行ったそうです。最初こそは「あのアーモン・ゲートの娘」として憎まれたそうですが、長年の交流ですっかり打ち解け合い、交流が続いているそうです。あやまちを償うには、どうすべきかを教えてくれるエピソードです。
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